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夢に出てきた場所に行きたい

オモコロ杯2021で銅賞を頂きました。やったー!!



noteにも同じ内容を投稿しています。noteの方が読みやすいレイアウトです。

1. 夢に出てきた場所に行きたい

10年前、夢の中に「Fluga」という単語が地名として出てきた。





これは2011年8月28日に見た夢のメモである。
当時使っていたガラケーにデータが残っていた。
昔から寝起きに見た夢をメモしていて、この日も携帯内のメモ帳に順不同で走り書きしていたようだ。
棚のパートと筋肉を痛めつけているパートとキャラメルはそれぞれFlugaとは別の内容で、この日の夢は4本立てだった。日曜日だったので二度寝していくつも夢を見たのかもしれない。
夢世界は当然架空の設定や荒唐無稽な内容が多いので、この日も特に気にしていなかった。

2018年3月、
当時勤めていた職場をやめることにしたのだが、辞表を出してから退職日まではやる気がなく、勤務中に頭に浮かんだものを検索したりして暇つぶししていた。
そこで昔見た夢のことを突然思い出し、何気なくGoogleマップで検索してみたところ、あの謎の地名がヒットした




実在するんだ!?すげ。

ノルウェーの離島らしい。遠いな〜。
こういう発見にはロマンを感じる。
いつか行ってみたいと思うものの、行き方を検索すると往復の航空券代だけで50万円はする。
衛星写真で見ると、何もない田舎のようだ。失礼だが人が住んでいるのかも分からない。
夢の中の地名が実在するらしいから行ってみた!と酔狂な旅行をするにはあまりにも大きい金額だし、私にはそんな貯金も収入のあてもない。
そんな感じで、人生のいつかやりたいことリストの80番目以降に入れられたままだった。

そして2020年。
おい、海外旅行どころか家から出られねえじゃねえか。
自宅勤務しながらNetflixとAmazon primeビデオとYouTubeを行ったり来たりしてるだけの日々。
なんとか食い繋いでいるが、あやうく仕事も失いかけた。
最寄りの海辺に揚げたての魚天ぷらを食べにも行きづらいし、
この雰囲気の中で緊張しながら近所のスーパーに行くのすら億劫なんですよねこりゃ。まいったよ。
そんなときは畳の上でどうしても、行けもしない遠くのことに想いを馳せてしまう。
家の中にいたままロマンチックなことをしたい。
ロマン……そう、

夢の中に出てきた場所に、行きたい。



2.まずは調べよう



……とは言え、行けないのは分かっているから少しでも行った気分になりたいということだ。

とにかく調べまくろう。


夢の中に出てきた情報はFluga(フルーガ)という地名のみ。

もし景色や人物が出てきて詳細に覚えていたらもっとロマンチックだったのだが、これが地名であるという設定とスペルしか覚えていない。

どこにある?


まずはGoogleマップで位置を再確認。


フルーガは、ノルウェーの西側にあるFanøya(ファノーヤ)という島の中の地名のようだ。


(西ノルウェーの離島、ファノーヤ。赤いピンの場所がフルーガ。)

地図上に表示される地名は、県境や区分け等がはっきりしている場合は境界線が表示されるし、建物や店の名前であれば色のついたピンが出る。
しかし地名がどこにかかっているのか範囲指定もなくぼんやりしているため、山の名前なのか道の名前なのか、集落の名前なのかも分からない。

次に、お手軽旅行疑似体験といえばGoogleストリートビューだろう。

……ない。
スポットで撮られた写真はいくつかあるが、港か山の景色くらいしかない。
まじ?



島についての情報


おおよその情報を知りたいので、wikipediaにお世話になろう。


https://en.wikipedia.org/wiki/Fan%C3%B8ya


……少ない
どういうことだ。面積と行政区分以外の情報が少なすぎる。人は住んでいるのか?
日本語版はもちろんないし、英語版もさっぱりとしている。地元であるはずのノルウェー語版もない。(※2021年1月17日現在)

島の面積は約1平方キロメートル。
東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせたくらいの大きさだ。
島には空港がなく、ノルウェー本土の最寄の町であるFlorø(フローレ)からフェリーが運航している。フェリーでの所要時間は約30分。カーフェリーだと約1時間。

私は沖縄に住んでいるため、自分のために分かりやすく沖縄で例えてみよう。
大きさは瀬長島と同じくらい。車なら10分もかからずに一周できてしまう。
フェリーで30分というと、沖縄本島から伊江島くらいの距離感だ。もし転勤になったとしても、週末は本島へ買い物に出かけられるぞという期待が持てる。
(※沖縄の地理に詳しくない方は適宜最寄りの離島に置き換えてお読みください。)

島自体が小さいうえ、wikipediaにも情報が少なくストリートビューもないということから人口が少ないことは予想できるが、観光地や何かの産業の島として大々的に栄えているわけでもないということなんだろうか。

行き方

まず沖縄・那覇空港から成田空港へ移動。
成田から中東またはヨーロッパの都市を経由し、ノルウェーのオスロ空港へ。
オスロからフローレ空港へ飛び、フローレからフェリーに乗ってファノーヤに着く。
片道約40時間の旅である。


目指すゴール

この記事を書こうと思ったきっかけは、タイトルと同じく、夢に出てきた場所に行きたいからだ。
最終的なゴールは実際に現地に行ってみることなのだが、家にいながらできる限界はなんだろうか。まず、知りたいことと調べたいことを整理する。


1.フルーガとはどこを指すのか
2.フルーガには何があるのか
3.フルーガの地名の意味と由来は何なのか
4.実際の現地の様子を見たい

1~3までは、調べて答えを探せるかもしれない。

4はストリートビューでの道を経たれたので、島について検索し、フルーガの写っている写真や動画の投稿を探す。

この方向で行きます。


よし!



3.言葉の壁


日本語の情報は皆無、英語でも情報が極端に少ない。

ノルウェー語のページをgoogle翻訳にかけて日本語にする場合は英語経由のはずだが、なぜがスムーズに翻訳されるページと、不自然な翻訳で文が意味を成さず、情報が読み取れないページとで差がある。

こうなったら直接ノルウェー語で調べるしかなさそうだ。


というわけで、自力で調べられるようになるためにノルウェー語を勉強し始めた

全然分からないよりも少しでも分かるほうが早く答えに近づけるはずだ。

アプリで挨拶や文法の基礎を覚え、旅行会話の本を参考にしながらオンライン教材と言語交換サービスを利用して勉強していく。



言語交換で知り合ったノルウェー人にもフルーガと島について尋ねてみたが、みんな行ったこともなければ名前を聞いたのも初めてだという。


話し相手がいることでノルウェー語の勉強をするモチベーションが高められたが、フルーガについての情報は得られなかった。

勉強してしばらくすると、まだまだ初級レベルだがノルウェー語から英語に翻訳したページの不自然な翻訳部分の原因を見つけ、辞書を引いて解読できるようになった。
ここからやっとノルウェー語での資料探しが進むことになる。



4.島にもっと近づこう


英語と自動翻訳だけに頼らず、ノルウェー語を学ぶことで前より手がかりが探しやすくなったとはいえ、ネット上にあるファノーヤについての情報自体がとにかく少ない。

島にある団体のウェブサイトを洗い出し、内容を読んで手がかりを探す


ファノーヤの島内にあるお店や団体など、ウェブサイトや連絡先などの情報を上げているところを見つけ、その中からヒントを得られないだろうか。


検索して出てきたサイトはこのくらい。

・売店

・コテージ

・サーモンの養殖業者

・ファノーヤのすぐ近くの島にある、個人で経営する博物館


他にも旅行の口コミサイトがヒットしたが、そこには宿泊施設の感想くらいしか書かれていなかった。


・売店

https://narbutikken.no/Finn-butikk/Narbutikken-Batalden

店名に「Nærbutikken(コンビニ)」を冠しているが村営有限会社らしい。

沖縄でいう村の共同売店のようなものかもしれない。

おそらく島で唯一の売店なので、ボランティアを含む地域のサポート活動をするなど島民の生活に密着しているようだ。

トップページには、島には車がほとんどなく、ハイキングや散歩におすすめののどかな田舎道とゲスト用の桟橋があると紹介されている。


・コテージ

https://bataldenishus.no/

島で唯一の宿泊施設らしき一棟貸しのコテージ。

宿泊施設ということは、コロナで観光客がいなかったりするのだろうか。

もし手が空いているのなら、一泊分の料金ぐらいでオンラインツアーとかやってくれないかな。

予約受付用のメールアドレスに「オンラインツアーやってませんか?」と問い合わせを送ってみた。


……が、返事が来ない。


クリスマス休暇中に送ったのが悪かったのかもしれない。

念押しで、休暇明けを狙ってもう一度送ってみる。


返事なし。


宿泊施設だろ!?

ブッキングの連絡先にメールして返事来ないことってある????


もしかするとクリスマス休暇どころか、お客さんが来なくて休業してしまっているのだろうか。そうだったら本当に申し訳ない。

ホテルではなく貸しコテージだから、オーナーさんが兼業で忙しいのかもしれない。

サイトには休業などの情報は出ていないが、生活は大変だろう。


心配になっていたところ、コテージのFacebookページにクリスマスのイベント情報が更新されていた。

https://www.facebook.com/bataldenishus/posts/2766459076959933


過去投稿をさかのぼると、島内のイベントでは毎回ここがメイン会場になっているようだった。

休業については分からなかったが、島をあげてのイベントを主導するとなるとお忙しそうだ。

泊まりに行けもしない私がこれ以上連絡しても仕方がない。


幸い、サイト内には英語ページがあり、コテージだけでなく島の紹介も掲載されていた。

手つかずの自然を満喫でき、ハイキングがおすすめ。

陸からでも海からでもかなり釣れる環境

コテージは1936年に建てられたもので、もともと地元の漁船のための氷貯蔵庫としての役割があったようだ。それを改装して宿泊施設にしているらしい。だから名前がIshus(イースフース=アイスハウス)なのか。

なるほど、ファノーヤは昔から漁業が盛んなわけね。


・サーモンの養殖業者

https://www.karstensen.no/omoss/

サーモンの養殖だけでなく、観光客向けに釣りのプランを出していた。

島の養殖業の歴史が書かかれたページによると、

養殖サーモンの天敵、ウオジラミをどうやって駆除するかが世界的な課題となっているが、ファノーヤの地元漁師がベラ科の魚がウオジラミを食べることを発見し、養殖業界に革命をもたらしたらしい。

このサイトの文章を読むためにめちゃくちゃ辞書を引いたのでサーモンの養殖と寄生生物に詳しくなってしまったが、少し島の歴史に触れられた。


・個人の博物館

http://www.bataldenhavbu.no/

ここはファノーヤのすぐ隣の、バタルデン島にある個人施設のようだ。

博物館の紹介ページには、島のニシン釣りとサーモン養殖の歴史について展示しているとある。木造の部屋の壁には漁船のポスターが貼られている。島の歴史は漁業とともにあるということか。

資料はダウンロードできないので、現地で閲覧するしかなさそうだ。今は何も見られない。

ゲストハウスも併設しているらしいので、こちらにもコテージ同様、オンラインツアーができるかという問い合わせを送ってみたが、返事がなかった

まじで大丈夫か?


ここまでで、島についての情報は得られたものの、フルーガについての情報はなし。



島の団体にコンタクトを取る


島民に直接聞いたほうが手っ取り早い。

FacebookやInstagramで、ファノーヤ関連のアカウントを探してみる。

いくつか出てきたうち、観光受け入れや情報発信も含むバタルデン群島全体の連携を図っているという団体のアカウントがFacebookで見つかった。


島について調べていて、フルーガという場所と地名について知りたいということをメッセンジャーで送ってみたところ、返信がきた。

夢の向こうに人がいることを実感する。


以下、意訳込みの返信内容。


***

『こんにちは。 フルーガの場所ですが、ファノーヤと橋でつながっている小さな島の名前なのか、それとも50年代に建てられた家と桟橋があるところのとてもローカルな名前なのか、よく分りません。 フルーガという名前はその場所/島で使われていた古い名前です。 また、私たちは島の南端を"Fimlandsneset"と呼んでいます。 フルーガが何を意味するのかはよくわかりませんが、二、三日いただければ調べられます。 ファノーヤは約50人が住んでいる村です。 昔「豊かなニシンの時代」と呼ばれていた頃には、3000人以上がファノーヤとバタルデン周辺の島に住んでいました。』

***


なるほど。現地の方もよく知らないのか。


ここで初めて返事が来たのめっちゃくちゃ嬉しい!!

現地の方とコンタクトが取れた!!!!


絶対にいろいろ聞き出したい。



私も返信を出した。だいたいこんな内容を送った。

・グーグルマップでも衛星写真でも詳細が分からない。

・ノルウェー人の知り合いに聞いても知らないと言われる。

・夢に出てきたからという変な動機ではあるが、とにかく島について知りたいし、いつかは行きたい。


するとまた返信が来た。


***


『世界が「正常」に戻ったら、大歓迎です!

道路は3キロしかなく、Googleの車が来ていないためストリートビューの写真はありません。

衛星写真に写っている家の1つは日常的に人が住んでいますが、もう1つは週末によく使われているキャビンです。』


***

うおおおお!!!!!!

人が住んでる!!!!夢で見たその場所に人間が住んでいる!!


しかし、由来を調べてくれると言っていたのにこれ以降返信が来なくなってしまった。

やっぱり気持ち悪かったのかもしれない。


・場所は実在するが、名前の意味と由来は分からない。

・島の人口は50人で、フルーガのあたりには建物と桟橋がある。

現地の方に直接話を聞けたが、フルーガについて得られた情報はまだこれだけだ。



新聞を購読する

わかったよ。島の自然とサーモンのことは分かった。
もうフルーガについては分からなかったとしても、島のことだけでもいいからもっと知りたい。
地元新聞のオンライン版を見つけたので、ローカルニュースを読めば手がかりが見つけられるかもしれない。
有料購読の申し込みにはノルウェーの携帯番号を使ったアカウント作成が必要なのだが、新聞社に頼んでアカウントを作ってもらった。
やっと読めた記事の中には、島に住んでいる人が登場し、暮らしの困りごと、祭りの様子など地元の様子が詳しく書かれていた。どんな島なのかが人々の生活を通して見えてくる。
画面を通して一方的に調べているだけなのに、私がぼんやりと夢見ていた場所に人一人が生きていて生活する島として現実味を帯びてきた。
花いっぱいの庭づくりをしているおばあちゃん、
ごみの分別方法に対して意見するヨガの先生、
島民総出の運動会で、学校がなくなってしまうことが残念だとスピーチする少年。
大臣が視察に来たり、桟橋が新しくなったり、相撲のノルウェー代表チームが合宿に来たりしている。


え、待って、相撲ノルウェー代表チームの合宿???


(有料のためアカウントがないと記事が読めませんが、下記ページで各記事のトップ写真のみ見られます。)

https://www.firdaposten.no/fan%C3%B8y


相撲のコーチ?島で合宿したの?てか島出身なの?日本に来たことあるの?

何にか知らんが少し近づいて来た気がする!お話聞けないだろうか。

この方のFacebookページからもメッセージを送った。

でも返事はなかった。

期待しすぎるのはよくない。



5.暗雲が立ち込める



一気に暗雲が立ち込めてきた。

正直、この写真撮った直後本当に雨が降ってきて濡れたし、三脚が倒れてジョイント部分に砂が入りまくって最悪だった。


本当にもう誰も返信をくれないのか?

ノルウェー語を学んでオンライン新聞を購読しただけで、

フルーガが何なのか、どこなのか、分からないまま迷宮入りなのか…?





怖くなってきたので、人に聞いてみた。


「もし探偵ナイトスクープで探してるものの正体が分からずじまいだったら、どうやってオチつけて終わってた?」


「だいたいはロケ中に見つからなくても後日調査した結果を出すよ。でも探す過程がめっちゃ面白かったらそのまま放送して、『結局分かりませんでした』でチャチャチャンのパターンもある」


「面白……?」


「でも普通はどんなに一生懸命ロケしても、結果が分からなかったらお蔵入りじゃん。そこらへんはシビアな世界でしょ」


あ~~~~~~~~!!!!!!!!




行かずに行った気分になれないか?


なんか頭ぐしゃぐしゃになってきたな。

いろいろ諦めて、どうにか行った気分にだけでもなれないだろうか



島の特産品はおそらくサーモンだけど、近所のスーパーに売ってるノルウェー産サーモンがファノーヤで獲れたものかどうかなんて分からない。


他に私の知っているノルウェーのものといえば……


ムンクの「叫び」…

The Scream.jpg

オーロラ…


空のオーロラの写真やポストカードも綺麗だけど、歌手のオーロラ・アクスネスの歌声も素敵だ。

大好き。


ノルウェー国旗の入ったボディクリーム…?



薬局で見つけて買ってみたが、アメリカの会社の製品だし中身は韓国製だった。

ノルウェーじゃないのかよ!



とりあえず地元の海を見て気を紛らわそう。

ほら、どうせ現地に行っても海を見るんだし、いいんじゃないかな。


……いや、ダメだ。



海が青すぎる!!

砂が白すぎる!!!

どう見ても南国!!!!!!

アナ雪の舞台といわれるノルウェーとは似ても似つかない。


やっぱりそんなものは気休めだ。


最後の悪あがき


Instagramでファノーヤのタグを探せば写真は出てくる。

Youtubeでもファノーヤの動画はある。

どっちももう見た。

でもそれはフルーガじゃない。

私が知りたいのは最終的にフルーガの謎なんだよ。

そこに何もなくてもいいから、フルーガが見たい!

あわよくば、ビデオ通話で現地の様子を見たい!!


ダメもとで、島にある各団体や機関に「気持ちばかりお支払いいたしますので、この辺りの写真か動画を撮って見せていただけませんでしょうか」と片っ端からメールを送った。

もう送ったところにもまた送った。

コテージはもちろん、共同売店、博物館、サーモンの養殖業者にも。

ヨガの先生と庭自慢のおばあちゃん個人にも送った。

手当たり次第、ここまでくるとスパムだ。

でも、どこに聞けばいいのかわからないから、島民だとわかれば手当たり次第に送るしかない。


6.まとめ


クリスマス休暇と年末年始は終わった。

どこからも返事が来なかった。

やっぱりいきなり知らん外国人から怪しい内容のメッセージが来たら、気持ち悪いよな。

本当に申し訳ない。


島の様子についてはだいたいわかった。

直接答えを聞けなかったものもあるが、推測と自力で調べられた限りの内容で仮説を立て、私の知りたかった3つのことをまとめたいと思う。


1.フルーガとはどこを指すのか

ファノーヤの東にある、橋で繋がった小さな島部分のことだと思われる。

もしくは、そにある山部分か、道、集落の名前。




2.フルーガには何があるのか

島の団体の方の話では、1で私が推測する部分には50年前に建てられた家と桟橋がある。

Googleマップの衛星写真に写っているのは小屋のように見えるものだが、その中の一つは現在も人が住んでいて、もう一つは週末にだけ使われているキャビンである。

これが唯一、現地に住む方から得られた貴重な証言だ。


3.フルーガの地名の意味と由来

間違いまくっているだろうという保険を最初でかけておく。

(※間違い部分はご指摘をお願いします、ノルウェー語の達者な方…!)


・意味

フルーガはおそらくハエ(蠅)を意味している。

Flugaはスウェーデン語・アイスランド語・フェロー語でハエという意味だ。

ノルウェー語のハエという単語を調べると、Flueと出る。

一見違うようだが、ニーノシュクではどうか。


ハエという単語はニーノシュクで「Fluge」であるが、

definite singular(英語でいう名詞の前にtheがついた状態。既知のものに対して使う形)だとFlugaになる。


現在のノルウェー語は大きく二種類に分けられる。

ひとつはデンマーク語の影響を受けており、多くの人に使われているブークモール。

そしてもうひとつは、国全体での話者数は少ないがよりデンマーク語の影響を排除し、方言や古ノルド語っぽさを残したニーノシュク。


ファノーヤの属する西ノルウェーのヴェストランド県は、ニーノシュクが公用語に指定されていたり、ニーノシュクや(オスロの言葉に比べると)アイスランド語に近い方言が話されている地域なのだという。

実際に西ノルウェー最大の都市であるベルゲンの方言をオンラインの教材等で聞いてみたところ、自分の分かる限りでは確かにアイスランド語に近い部分がある

私が購読した地元新聞もニーノシュクで書かれている。


フルーガやファノーヤについて調べる際に翻訳サービスでなぜか不自然に訳されていたページは、ニーノシュクだった。

おそらく翻訳サービスのノルウェー語はブークモールに対応しているから、ブークモールと違っている部分がひっかかっていたのだろう。


また、2015年のこの記事によるとフローレではニーノシュクの使用者数がブークモールの使用者数よりも多いという。5~6年で話者数が大逆転する可能性は低い。


・由来

この地域の民話にハエに関係した話がある、

もしくは漁と養殖が盛んなので、サーモンを釣るためのフライに由来する(フライフィッシングのフライはハエという意味)と推測する。






https://ordbok.uib.no/perl/ordbok.cgi?OPP=Fluga


flugeからflugaへ単語の末尾が変化している部分についてだが、ノルウェー語は英語のように冠詞が名詞の前に付くのではなく、対象や名詞の性によって名詞の形そのものが変化する言語である。

そのため、名詞ごとに変化の形も覚えなければならない(それにニーノシュクはアイスランド語のように男性名詞・女性名詞・中性名詞の三つの形を持つ)。


a fly(ei fluge)ではなくthe fly(fluga)。

最初は、漁をして廃棄した魚に群がるハエが大量にいた場所なのか?と思ったのだが、ハエがいっぱいいるのではなく、「あのハエ」と呼ぶ一匹の特別なハエがいるということだろう。

職人の作ったやたらに釣れるルアー(フライ)の名作があったのか、島にハエにまつわる民話があったのか。釣りのことには詳しくないので全然わかりませんが…。

はたまた「なんかあそこにめちゃくちゃでっかいハエがいたから」とかだったら単純でいいな。


……やっと自力で答えに一番近いところにたどり着けた気がする!



夢で見た場所を調べたら実在していて、そこには歴史や文化や人々の生活があり、美しい自然があった。

この機会にたくさんの人と出会えたし、島のことだけでなくノルウェー語も勉強できた。

今の私にはいつか行くぞと口先で言うことしかできないが、ロマンを抱いて貯金しながら生活を乗り切っていきたい。


では……

Ha ein fin dag!(よい一日を!)






7.急展開


↑こんな感じで、

ひとりで調べまくって島民にスパムを送った挙句「怪しまれて返事が来ないし失敗しました!」と考察だけつけて締めようとしていたところ、地元新聞社の編集長から返事が来た。



以下、翻訳。


***


『ファノーヤに興味を持っていただき、私たちにご連絡いただき、あなたの話を紹介していただきありがとうございます。

まず、保障させてください。フルーガは実在する場所です。おっしゃる通り、バタルデン群島のファノーヤにあります。

バタルデン /ファノーヤは、フローレ市の西に位置する6つの大きな島のひとつで、総人口は500〜600人です。

本誌の元記者と話したところ、あなたのメールを彼女も受け取っていました。

彼女は来週末、自宅のあるファノーヤにいる予定ですので、あなたのためにフルーガで写真を撮ってくるそうです。フルーガの写真を受け取り次第、またご連絡いたします。』


***



あ、あ、ありがてえ~~~~~!!!!!


夢とかロマンとかなんとか言っている見ず知らずの怪しい外国人に、優しく対応してくださる人々の親切が身に染みる!!!!


そして送られてきた写真がこちら。

これが私の夢に出てきた場所の本当の姿だ!!!






(ここにanneさんの写真入れる)







※1月17日

(Anneさん!!まだ写真届いてないです!!送るって言ってくださってたんですがまだ届いてないです!こういうの催促しちゃ失礼ですがめーーーーーーーーちゃくちゃ楽しみにしているので早く!早く見たいです!!!!!頼む!!)


本物を受け取り次第差し替えますが、一応受け取ったていで嘘の感想を書いておきますね。



※以下、嘘の感想※



ほ、ほんもの……。


ポストカード?


絵本の世界???


桟橋もその周りの建物も、絵本に出てきそうな佇まい。

夏にはここでボートを出して釣りをしたり、子どもたちが桟橋から飛び込んで泳いだりするのかな…。

冬らしく雪が積もっているが、凪いだ水面に映る空の色が綺麗だ。

夢では地名だけを覚えていて景色は全く分からなかったのだが、本物の景色は夢のように美しい。


現在(2021年1月)、ファノーヤの辺りでは日出9:30で日没が16:00と、太陽の出ている時間が短い。

そんな中、外がよく見える時間帯に急いで写真を撮ってきてくださった元記者の方には感謝しかない。


やっぱり、絶対に行くしかないよ~~~~~~!!!!!!

あ~~~~~~~~~!!!!!!!!




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